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遠き天の目   川越ジェフ@Jeff_kawagoe


0.シナリオの読み方

・戦闘ルール:ルールブック通り。特に回避・受け流し周りのルールをそのままに適用したバランスで設定している。

・技能判定及びキーとなる行動については<>で囲っている。
技能成功とそれに付随する情報は、

<目星>に成功
部屋に落ちている鍵を見つける。

のように記載している。
KP側から進んで<>の技能が使用可能だと示すことを推奨している。

・情報収集項目
何を探索すればいいかわからない、探索がグダる、などの理由から探索を簡略化するために提示する項目。
技能に成功することで情報を引き出せるし、失敗しても探索のベクトルを把握することでより的確な判断をできるようになるだろう。
-------------------------------------------
・モケーレムベンベ  ←情報収集項目
<オカルト>or<EDU>  ←情報収集に使用する技能
文献調査        ←適切な演出など
-------------------------------------------

・※0 最後に対応した注釈を記載している。


1.はじめに

このシナリオは、「クトゥルフの呼び声・第六版」に対応したものである。
シナリオの舞台は刀鍛冶で有名な天目(てんもく)市である。季節は秋。
PCは大学生か、大学を卒業した社会人が望ましい。
PLは4人を想定している。
想定時間はオフラインのセッション、オンラインのボイスセッションで3~4時間程度。
オンラインのテキストセッションで8時間程度。
日本刀を用いた不可避の戦闘があることを伝えておくと良い。
また、KPは「クトゥルフ2010」を所持し、日本刀周りのルールを確認しておくこと。


2.あらすじ

シナリオ募集などのためのPL向けのあらすじである。
適宜改変して公開すると良い。※1

PCたちは刀鍛冶で有名な天目(てんもく)市を旅行で訪れることになる。
喧騒からは遠い静かな町で、くつろぎながら観光を楽しむPCたち。
お土産となる模造刀の受け取りの際、PCたちは殺人事件に巻き込まれる。
この日本刀に纏わる怪異事件を解決することはできるのだろうか?


3.KP向けあらすじ

千年前、天目市に現れた一人の刀鍛冶。
彼は鍛冶の道を極めるその中で、炎の神に信仰を向けていた。
その信仰が実ったのか、それとも誰かに教えられたのか。彼は神との接触を果たす。
クトゥグアと呼ばれるその神が、夜空に一つだけ輝く瞳のように光るさまを見た。
あれこそが鍛冶の神であり、炎を司る天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)なのだと。
彼はほどなくして将来的には天目市と呼ばれる場所にたどり着き、鍛冶の技術を広めた。
だが、異界の神の知識は彼を狂気へと追いやった。
彼の起こした事件の真相は葬られ、古硫玻主の刀と呼ばれる刀の伝説が残った。
これは西洋ではコルヴァズの剣とも呼ばれ、クトゥグアの封印されたコルヴァズに由来する。

そして現在。
多々良誠二は、祖父のコレクションである日本刀に囲まれ育った。
その憧れが彼を刀匠にした。当然、伝説的な刀である古硫玻主の刀
古硫玻主の刀を再現する試みは、どんな手段を使うことも厭わせなかった。
合金を使って古来の日本刀とは違うアプローチで目指そうとした。
師である山瀬はそれを知り、彼を破門した。
多々良は家業である不動産会社の管理する建物に篭もり、鍛刀を続けた。
その過程で、千年前の刀匠と同じくクトゥグアに関する知識を得ることとなる。
超硬合金を用いた最新の技術と、炎の吸血鬼を刀身へ憑依させることで彼の古硫玻主の刀を完成させる。
事件当日、多々良は山瀬を訪ね、古硫玻主の刀を完成させた旨を伝える。
また、山瀬の鍛刀所から天目神社へと刀を奉納する権利を譲ってもらおうとする。
しかし、彼が相変わらず邪道な方法で日本刀を作っていたことに山瀬は落胆する。
口論となり、多々良は山瀬を殺害する。

多々良は殺人の後、彼の作業場で天目神社への襲撃計画を練っている。


4.NPCs

山瀬 文平(やませ ぶんぺい)♂ 高名な刀鍛冶
職業:刀匠 年齢:64
STR:13 DEX:6  INT:14 アイデア:70
CON:12 APP:11 POW:15 幸 運:75
SIZ:10 SAN:81 EDU:14 知 識:70
H P:11 M P:15 回避:12 ダメージボーナス:0 
―――――――――――――――――――――――――― 
[技能] 
制作(日本刀):95% 値切り:55% 日本刀:50%
[プロフィール]
刀とその鍛冶に興味を持ってくれる若者たちのことを嬉しく思っている。
頑固な職人肌が多い中で珍しい好々爺。
古硫玻主の刀を巡って口論になり、多々良に殺害されてしまう。

 

山瀬 さち(やませ )♀ 無垢な依頼者
職業:小学生 年齢:11 
STR:7  DEX:14 INT:13 アイデア:65
CON:13 APP:13 POW:12 幸 運:60
SIZ:8  SAN:60 EDU:6  知 識:30 
H P:11 M P:12 回避:28 ダメージボーナス:-1d4 
―――――――――――――――――――――――――― 
[技能] 
運転(一輪車):99% 芸術(書道):45%
[プロフィール]
山瀬文平の孫娘。両親は既に他界。
明るい性格のため小学校では人気者。字が綺麗。一輪車で壁とか走っちゃう。
だが、事件によって深く悲しんでいる。
今回の事件では祖父を殺した犯人を探すように探索者へ依頼する役割。

 

多々良 誠二(たたら せいじ)♂ 焦がれる狂信者
職業:刀匠 年齢:32
STR:14 DEX:13 INT:17 アイデア:85
CON:13 APP:9  POW:8  幸 運:40 
SIZ:13 SAN:4  EDU:13 知 識:65
H P:13 M P:8  回避:26 ダメージボーナス:+1d4 
―――――――――――――――――――――――――― 
[技能] 
制作(日本刀):65% 日本刀:80% クトゥルフ神話:24%

古硫玻主の刀 80%

通常の攻撃を行う場合 1d8+1+db
1MPを消費し、刃を白熱させたときの攻撃力 3d6+db
あらゆる可燃物に刀身を触れさせるだけで発火できる。
1MPの消費で1体の炎の吸血鬼を召喚できる。
抜刀の度に正気度喪失判定を行う。0/1d3。
1Rあたりの受け流し回数に制限がなくなる。
装備者への日本刀を用いた以外の攻撃を無効化する。
日本刀の攻撃に対しての受け流しが自動成功する。
使用者の正気度が0になった場合、焼身して炎の吸血鬼に生まれ変わる。
[プロフィール]
このシナリオの黒幕である。
裕福な家庭の次男に生まれ、何不自由なく育つ。
刀に対する造詣が深く、自分も伝説の刀匠のように立派な刀匠となる夢を抱いていた。

 

多々良 俊彦(たたら としひこ)♂ 多々良不動産・課長
職業:不動産会社社員 年齢:34 
STR:12 DEX:9  INT:16 アイデア:80
CON:14 APP:13 POW:14 幸 運:70
SIZ:14 SAN:70 EDU:18 知 識:90
H P:14 M P:14 回避:18 ダメージボーナス:+1d4
―――――――――――――――――――――――――― 
[技能] 
値切り:75% 信用:75% 法律:50%
[プロフィール]
多々良誠二の兄。
裕福な家庭の長男に生まれ、多々良不動産を継ぐ立場にある。
色々と揉め事を起こす弟の誠二のことを疎ましく思っている。
PCたちにとっての情報源として機能するだろう。

 

多々良 静(たたら しずか)♀ 心を痛める母
職業:社長夫人 年齢:64 
STR:8  DEX:12 INT:15 アイデア:75
CON:11 APP:15 POW:10 幸 運:50
SIZ:11 SAN:50 EDU:20 知 識:99 
H P:11 M P:10 回避:24 ダメージボーナス:0 
―――――――――――――――――――――――――― 
[技能] 
聞き耳:55% オカルト:65% 信用:85%
[プロフィール]
多々良兄弟の母親であり、社長夫人。
一人で刀工活動を続けている誠二のことを案じている。


5.キーパリング方針

PCたちは観光に来た旅行者である。
それほど序盤から探索を熱心に行う必要が無いし、ロールプレイとして不適切だとPLに伝えると良いだろう。
具体的には「9.山瀬の死」までは一観光者でしかないが、事件によって探索者へと立ち位置をシフトしていく。
楽しい雰囲気を演出することで後半との落差を生み、以降の探索が緊迫感あるものとなるだろう。
また、「11.情報収集」における情報収集項目によって概ねの方向性が示される。
クライマックスへ到達する条件としては、『多々良誠二の居場所を特定すること』である。
「13A.天目神社のさち」「13B.多々良の実家」「13C.多々良不動産」は、
どこへ向かっても条件を達成し得るないしはそのヒントが見つかる。
この条件を達成し次第、「14.燃えよ剣」へ以降することを促すと良い。
「14.燃えよ剣」では基本ルールブックの戦闘に準拠し、移動力などの彼我距離を考慮に入れないものとする。
ハウスルールで曖昧になりがちな受け流し・回避周りを基本ルールブック通りに行う練習にもなるだろう。
日本刀による受け流しは攻撃を行ったターンにも可能なので、実際の相手の攻撃成功率としてはそれほど高くない。
PCから一名死亡者が出るか出ないか、程度の設定にしている。
「15.遠く輝ける北落師門」では描写と行動に合わせたレスポンスをすれば答えを自ずと見つけてくれるだろう。
正気度喪失はそれほど大きくない。致死率も同様である。
KPは情報を出すことを惜しまず、PLをリラックスさせていい感じにふわっとやればセッションが楽しくなるんじゃないかな。
正気度喪失が少ないため、しっかり全員に行わせること。
ゲームバランスを考えて、日本刀の技能値に制限をかけても良い。その場合は75が上限の目安である。


6.天目市到着

天目市へ到着する。宿にチェックインし、荷物を預けると早速観光へと向かう。
この時点で向かうことができるのは三箇所ある。
山瀬文平鍛刀所に模造刀の制作を依頼しており、また見学の申し込みも済んでいる。
天目神社は近々刀にちなんだ祭りが行われるようで、準備中ではあるが参拝できる。
天目遊園地はローカルな遊園地ではあるが、様々な設備がある。

鍛刀所へ向かうなら、「7A.山瀬文平鍛刀所」
天目神社へ向かうなら、「7B.天目神社」
遊園地へ向かうなら、「7C.天目遊園地」へシーンを移行する。


7A.山瀬文平鍛刀所

人の良さそうなお爺さんがこちらにやってくる。
「はじめまして、刀匠の山瀬文平と申します」
挨拶が終わると、鍛刀所の中の見学が始まる。
「こちらは玉鋼を鍛錬しているところですな」
「何度も叩くことで不純物が抜け、丈夫になるのです」.etc

一通り見学が終わった後、客間に通され、注文しておいた模造刀の確認が行われる。
PCたちにはそれぞれ番茶が振る舞われる。
「こちらがご注文の品です。あとは最後の仕上げだけですな」
「まあ与太話と思われるかもしれませんが、私は日本刀とその主の相性が一番と思うのですよ」
「ですから皆さんと直接お会いして、そのお顔と人柄を見て最後の仕上げをするのです」
「お手数をおかけして申し訳ないですな、」
「まあ余談でしたな、聞き流してください」

少女が客間に入ってくる。
「おじいちゃーーーん!」

(険しい顔で)「こらっ!仕事場で走るんじゃない!」
(笑顔に変えて)「・・・危ないからここでは気をつけるように言ったじゃないか」
「お客さんがいらっしゃってるから、またお仕事の後にね」
「申し訳ありません・・・きかん坊な孫でして」
「ついつい甘くなってしまうものです」

 

[山瀬文平との会話]

・孫について
「ああ、あの子はさちといいます」
「あの子と二人で暮らしているんですが、贔屓目無しでよくできた子ですよ」
「むむむ、長くなってしまいそうなのでやめておきましょう」

・商売はどう?
「まあ、ぼちぼちでしょうかな?」
「こんな世の中でも質のいい日本刀を欲しがる愛好家の方たちはいらっしゃるわけですから」
「お金が一番、とはいいませんがお金を掛けなければ質のいい日本刀は作れないわけです」
「問題はお金よりもむしろ人、ですかの。若い人が技術を受け継いでくれないと文化は失われてしまうわけですから」
「もし興味があれば、なんていいましたか、いんたぁん?のような試しの修行も受け付けております。ぜひぜひ」

部屋には弟子たちとの集合写真が掛けられている。
<アイデア>今働いている人数より一人多い。

・弟子が写真より一人足りないけれど?
「ああ・・・まあ、やりがいがある分辛い仕事ですからね」
「辞めていくものが出るのは仕方のない事です」

<心理学>老人が嘘をついているよう見える。単純に仕事が辛いから辞めたわけではなさそうだ。
しかし酷く辛そうで重ねて問い詰めるのは可哀想だ。

「それでは、こちらの刀の確認も終わったので最後の仕上げをして明日のお渡しになります」
「お手数ではありますが、また明日お越しになってください」
「明日は休みですが、正面玄関は開けておきますので遠慮無くいらしてください」


7B.天目神社

祭りが近いためか、境内までの道のりでは的屋の屋台の設営が行われている。
複数人の警備員が巡回している。
手の開いている神職に話を聞くことができる。

 

[神職との会話]

・どんなお祭り?
「鍛冶の神様である天目一箇神に刀を奉納するお祭りですよ」
「鍛冶の盛んなこの町ですからね」

・天目一箇神とは?
「それはですね・・・」
天目一箇神の情報を開示する。

【天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)】
日本神話に登場する製鉄・鍛冶の神である。
ひょっとこ(火男)の原型とも伝えられている。
岩戸隠れの際に刀斧・鉄鐸を造った。
この土地においては鍛冶が盛んなことから神社に祀られている。

・この神社の成り立ちは?
「それはですね・・・」
天目神社の情報を開示する。

【天目神社】
天目一箇神を祀る神社。
才能ある刀鍛冶でもあったとある侍が鍛鉄技術と天目一箇神の信仰を齎した。
天目一箇神を祀ると同時に、この侍への敬意を表する神社でもある。

・とある侍について詳しく
「戸有 侍(とある さむらい)というらしいです」
「いや、昔のことですからあんまり詳しくはわかりませんよ?」
「成り立ちについては諸説あるみたいなので、気になるようなら後で調べてみたらどうでしょう?」

・だいぶ警備が厳重みたいだけど?
「まあ、刃物を扱ってますからねえ。盗まれたりしたら大変です」
「管理が大変なので各鍛刀所につき一本までしか奉納できないんですけど、それでも結構な数ですし」
「なのでこの時期はいつも警備会社に依頼してるんですよ」

 

話が終わると、神職は
「皆さんも是非お祭りにいらしてくださいね」
と言い、離れていく。


7C.天目遊園地

絶叫マシンやジェットコースターなどが一通り揃っている。
敷地が広い分、スポーツ公園としての活用もされているようだ。
一通り遊んだ後、何かの碑が置いてあることに気付く。
どうやら戦前に城が建っていたらしい。

<目星>or<アイデア>に成功
この遊園地を管理している会社は多々良不動産というらしい。
宿に帰る途中でもいくつか地所や物件の管理をしているのがわかる。
この地元では有名な会社のようだ。


以上の3シーンを全て回ると、8.宿に戻って小休止へと移行する。


8.宿に戻って小休止

一通りの観光が終わり、宿に戻る。
このシナリオにおけるPCたちにとって最後の日常パートである。
このことはPLにも伝え、適宜演出・キャラクターRPを行わせると良い。
豪勢な料理や、温泉、枕投げなどが適切だろうか。
終わり次第、次のシーンへ移行する。


9.山瀬の死

次の日、山瀬文平鍛刀所を訪れ模造刀の受け取りに来たPCたち。
今日は休みのようで、鎚の音や人の声がまるで聞こえない。
正面玄関は空いており、作業場に人の姿はない。
山瀬に呼びかけても返事はない。

<聞き耳>に成功
何か肉のようなものが焼ける匂いがすることに気付く。

客間へと進むと、床に転がる山瀬の死体を見つける。正気度喪失1/1d4+1。
山瀬の着衣は斜めに切り裂かれており、その下の肉も切れているのだが、傷が塞がっている。
出血の痕跡はそれほど見当たらないが、部屋の高い位置に凝固した状態で付着している。

<医学>に成功
レーザーメスのように、熱を持った刃で皮膚を切ったために出血の痕跡が激しくないのだと考える。
また、刃の熱で血液が熱せられ、部屋の高い位置へ付着した後に急速に凝固したのだ。
<日本刀>に成功
山瀬が逆袈裟斬りで斬られたのだとわかる。
つまり、居合い抜きに近い状態で抜刀し、右斜め上に向けて斬り上げた。
そのため刃の切っ先が上を向き、部屋の高い位置に血液が付着したのだ。

山瀬の片手には「古硫玻主の刀」と書かれた郷土資料らしきものが握られている。
難解な日本語で書かれており、時間をかけて調べる必要がありそうだ。
山瀬の方には転がった茶碗が、反対側にも茶碗が茶の入った状態で置かれている。

<アイデア>に成功
転がった茶碗は山瀬が倒れた時に一緒に転がったように見える。
また、もう片方の茶は犯人に出された茶ではないか?と考える。
つまり、犯人は客人としてこの鍛刀所を訪れたということになる。

一通りの探索を終えると、勝手口から人影が出てくるのを見た近隣住民の通報で警察がやってくる。
次のシーンへ移行する。


10.取り調べ・探索開始

取り調べは夕方には終わる。
PCたちには動機・凶器・犯行時間などが噛み合わず、疑いは晴れて解放される。
取調室から出ると、保護されていた山瀬さちが、寂しそうに待合の長椅子に腰掛けている。
PCたちを見つけると、意を決したように話しかけてくる。

「おじいちゃんをあんなふうにした人を・・・」
「だれか知りたいの!調べてくれませんか?」

 

[山瀬さちとの会話]

・なぜ自分たちに依頼する?
「他に頼れる人もいなくて・・・」
「同じ鍛冶場の人たちは取り調べとかで忙しいし・・・」
「お祭りが近いので皆さん自分たちのことで手一杯でしょうし」
「みなさんは第一発見者なので何か手がかりを持ってるんじゃないかと思ったんです」
「やっぱりだめ、でしょうか・・・」

・事件について何か知らない?
「すいません、特には・・・」

・古硫玻主の刀について
「えーと、有名なお話ですよ」
「確か・・・ごめんなさい、忘れちゃいました」
「気になるならこの後調べてみればどうですか?」

しばらくすると、身寄りの無いさちのことを神主が迎えに来る。
PCたちは宿に戻って休み、次の日からの探索の準備を始めるだろう。
次のシーンへ移行する。


11.情報収集

警察の取り調べが終わった後、PCは探索者として事件を調査することになるだろう。
以下の情報収集項目を提示する。

・古硫玻主の刀
<図書館>or<オカルト>or<日本刀/5>
文献調査

・天目神社
<オカルト>or<聞き耳>or<信用>
文献調査/聞き込み

・事件の詳細
<言いくるめ>or<信用>
警察からの情報の聞き出し


【古硫玻主の刀】
古硫玻主(こるばす)の刀。これについて描かれた絵を発見する。
左側に一人の武士が刀を持って立っており、逆の方へ刀を放り出して逃げていく集団が描かれている。
昔、この町に一人の武士が流れ着いた。
その武士は天目一箇神の加護を受けた者と名乗り、この地に優れた鍛冶の技術を齎した。
その腰に佩いていた刀、それが古硫玻主の刀である。
その切れ味は鋭く、刀身は炎のように熱かった。
ある日、この武士に狐が憑き(発狂し)、住民を襲い始める。
腕利きの武士の集団で束になって襲いかかる、遠くから矢を射掛けるなどこの武士を倒すために様々な手段が用いられた。
しかし、この武士を倒すことは適わず、刀を手放した隙に暗殺する他なかった。
その後この地の藩主へ献上されたが、試し切りの際に折れてしまった。
この地の刀鍛冶には伝説の一品として言い伝えられており、この刀を再現しようとする試みも少なくない。
この武器を装備した場合、
1.1Rあたりの受け流し回数に制限がなくなる。
2.装備者への日本刀を用いた以外の攻撃を無効化する。
3.日本刀の攻撃に対しての受け流しが自動成功する。
この武器は一度の戦闘で一定の回数受け流しを行った時、武器として機能しなくなる。

 

【天目神社】
天目一箇神を祀る神社。
刀匠が作った刀を奉納し、古硫玻主の刀に替わる新たな神刀となりうるか試す。
その試し方というのは、神社にある台座に刀を差し込むことである。
新たな古硫玻主の刀が台座と対になることで天目一箇神との対話を行うことができる。
管理の問題で、奉納する刀の数は各鍛刀場につき一本までということになっている。
現在、天目神社は祭りに向けて管理が厳重になっている。
夜中でも忍びこむことは不可能だろう。

 

【事件の詳細】
右太ももの付け根辺りの下腹部から左胸にかけて逆袈裟斬りに斬り上げられている。
居合い斬りに近い状態から抜き打ちで斬りつけたのだろう。
熱した刃で切り裂かれたのか、傷口が閉じていた。このため現場の血痕はそれほどない。
ただし、体内の器官は高熱のために一部炭化している部分もあった。
部屋の上部に凝固した血痕が付着しているが、これは加熱されたためである。
また、傷の断面に何らかの金属の粉末が付着している。
この粉末については現在鑑識の報告待ち。

全ての情報収集項目に判定を行えば、探索の方向性は決まるだろう。
他の鍛刀所、もしくは神社で聞きこみをするのであれば、次のシーンへ移行する。


12.犯人の影

山瀬文平鍛刀所は捜査のため封鎖されている。
他の鍛刀所、もしくは神社で聞きこみをすると益巣 虎彦(えきす とらひこ)という刀匠へ話を聞ける。

「おう、山瀬さんの事件か・・・俺に話せることなら何でも」
「と言っても事件についてはあんま詳しくないんだけどな」

 

[益巣虎彦との会話]

・山瀬について
「山瀬さんは腕の良い刀匠だったよ。人格者だったしね」
「お弟子さんの育成にも熱心だった」
「厳しくはないけど、逆に真剣にならざるをえない雰囲気を持っていたというか・・・」
「本当に残念だよ。多分誰もがそう思ってる」

・辞めた弟子
「さあ・・・?」
「ただ俺もしょっちゅう向こうの鍛刀場行ってるわけじゃないから知らない間に辞めてるってのはあるかもな」
「全く若いのは根性がない!」

・古硫玻主の刀について
「ああ、古硫玻主の刀ね」
「迷信って言えば迷信なんだが、皆そんな名剣を目指して技術の修練に励んでるのさ」
「まともに信じてる奴はほとんどいないよ・・・。ああ、でもあいつは別か」
「山瀬さんのところにいた多々良って奴は本気で信じてたな」
「ただ彼、なんて言うの?あまりに妄信的っていうか・・・」
「刀身を玉鋼以外で、超硬合金使ったり。本当はやっちゃいけないんだけどさ」
「そういえば最近会ってないなあ。彼詳しいから、会いに行くならよろしく言っといてよ」

<法律*2>or<日本刀>に成功
日本刀と認められず銃刀法違反である。多々良が手段を選ばない男だとわかる。※2

・多々良の人柄
「なんていうか、刀が大好きな奴?」
「いや、ここにいる奴って大体そうなんだけどさ、あいつは特にそう」
「いいとこの坊っちゃんだったらしくて、それで家に刀があったんだって」
「だから早く神社に奉納できるように良い作品を仕上げたいって言ってたな」
「上昇志向が強い?っていうのかな?」

・あなたも神社に刀を奉納した?
「ああ、したよ」
「まあ鍛刀所を代表するものだからな、変なものは作れねえよ」
「気合入れた一品だな」

行動に合わせて
「13A.天目神社のさち」
「13B.多々良の実家」
「13C.多々良不動産」へシーンを移行する。


13A.天目神社のさち

「9.取り調べ・探索開始」で描写された通り、さちは神社に預かられている。
神社の敷地内では子どもたちが遊んでいる。託児所のような機能もあるのだろう。
その輪から外れたところに、さちは座っている。

[山瀬さちとの会話]

・大丈夫?
「大丈夫、です」
「・・・」

・多々良について
「多々良さんですか?」
「あの人は・・・怖いです。熱心なお弟子さんでしたけど、刀以外に何も興味ないみたいで・・・」
「あまり詳しくないですけど、多々良さんのおうちならわかりますよ」
「あと、お兄さんが多々良不動産で働いてるみたいです」


13B.多々良の実家

会社を経営しているだけあって、屋敷とも呼べる大きい家だ。
この辺り一帯が多々良家の土地なのか、ほとんど人の気配もない。
インターホンを押すと、上品な婦人が出てくる。

「初めまして。どちら様でしょうか?」

 

[多々良静との会話]

・刀匠をやっていた多々良に会いたい
「・・・誠二のことですか?」
「この家にはいませんよ、お帰りください」

・誠二の居場所を教えてほしい
<説得/2>PC1人のみの判定

<説得/2>に成功
「・・・誠二は、この場所にいます」
「話せば、あの子がそんな事をする子ではないとわかるでしょう」
誠二の居場所の情報を得る。
<説得/2>に失敗
「あまりしつこいと、警察を呼びますよ」
ドアを閉められる。会話は終了する。

会話が打ち切られた後、屋敷の周囲を調べることができる。

<屋敷の周囲を探る>自動
屋敷の裏に回ると、2階に窓の空いた部屋が一つだけある。
その側に凹凸の多い木が生えており、登れば2階の窓から中に入れそうだ。
<登攀>に成功
木を登ることができた。2階の部屋の探索に参加する。
<登攀>に失敗
木を登ることができない。2階の部屋の探索に参加することができない。

2階の部屋に入ると、まず大量の刀が陳列されているのがわかる。
誰かが収拾していたのか、装飾なども見事なものだ。
しかし、今では手入れは殆どされていないようだ。
錠が掛けられており、持ち出すのは難しそうだ。
本棚には乱雑に書類や書籍が置かれている。

<扉から外の様子を伺おうとする>自動
外に使用人がいるようだ。この部屋しか探索できそうにない。

<図書館>に成功
多々良家が過去に所有していた物件の目録を見つける。
多くは不動産所有のものになっている。
家族に向けて分与された財産のリストでは、多々良誠二に向けて山奥の日本家屋が割り振られている。

<目星>に成功
写真を入れた日記を見つける。
中心には老夫婦が腰掛けており、その後ろには息子夫婦であろう二人。
横には孫らしき兄弟が立っている。
「俊彦は幼いながらも、長男としての自覚を持っているようだ。誠二は刀匠を目指したいと言っている。
この可愛らしい孫二人に幸せが来ることを祈っている」

この部屋を一通り調べ終わったら、使用人がこの部屋を掃除するために扉の鍵を開けようとする。
「あれ、この鍵じゃない・・・」
鍵束に手間取っているようだ。もう少しで部屋に入ってくるかもしれない。

<窓から降りようとする>自動
登ることができたのなら、降りるのも簡単だ。
簡単に降りることができた。


13C.多々良不動産

多々良不動産は小綺麗なオフィスに入っている。
カウンターに多々良誠二の兄である、多々良俊彦が座っている。
彼は胸に「多々良」というネームプレートを付けている。

「次の方、こちらへどうぞ」
「どのような物件をお探しでしょうか?」

 

[多々良俊彦との会話]

・PCたちが俊彦を弟の誠二と勘違いしている
「ん?何か勘違いされていませんか?」
「私は多々良俊彦。あなた方が探しているのは弟の多々良誠二では?」

・誠二のことについて聞く
「やれやれ、またあいつが何かやらかしたんですか?」
「あいつはふらふらとしてますからね。一族の面汚しだ」
「黙っていればこの会社でそれなりの地位があったものの」

・誠二に殺人の疑いがかかっている
「殺人?誠二が?あいつにそんな度胸ありませんよ」
「まったく・・・バカバカしい」

・誠二の居場所を教えてほしい 
<信用>or<言いくるめ>or<説得>

<信用>or<言いくるめ>or<説得>に成功
「ほら、これがあいつのいる物件ですよ・・・多分会ったら疑いも晴れるでしょうし」
と言いながら俊彦は誠二のいるであろう物件の所在を教えてくれる。
<信用>or<言いくるめ>or<説得>に失敗
「話になりませんな」
「(電話が鳴る)おっと、失礼。取引先からの電話のようです」※3
と言って席を立つ。

<信用>or<言いくるめ>or<説得>に失敗し、彼が席を立つと、彼の後ろにあったファイル棚に目が行く。

<図書館>or<目星>に成功
後ろのファイル棚に契約更新した書類が立ててあるのを見つける。
その氏名には「多々良誠二」と書かれている。
誠二の所在を発見する。


以上から誠二の所在を手に入れ、誠二のいる物件へ向かうなら「14.燃えよ剣」へ移行する。


14.燃えよ剣

多々良の所在は山奥にある隘路を抜けた先の住宅である。
日本家屋の一階部分が改築され、作業場として活用されているだろうことがわかる。
建物の入口は正面玄関のみである。
そのまま入り進むと、作業場に出る。
多々良はこちらに背を向けて作業を続けている。
多々良はこちらに気がつくと作業を中断し、刀の鞘を床に突き、柄に手と顎をのせる。
「うちは鍛刀の注文は受けてないよ」

作業場に入ると同時に部屋の描写を行う。
部屋の中には沢山の刀が置かれている。試行錯誤の結果だろう。
床には金属の粉末が落ちている。近くにはグラインダーがあり、刀を研磨していたことがわかる。
<事件の詳細を調べていた場合>山瀬の傷口の金属の粉末がこれと同一のものだとわかる。
また、炉には火が入っており、絶えず熱を放っている。

 

[多々良誠二との会話]

・山瀬を殺したのはお前か?
「あー・・・あー・・・まあいっか」
「そう、俺がやったよ」
「こんなに素晴らしい、俺の古硫玻主の刀が完成したってのに」
「師だった山瀬に奉納する権利を譲らせてやろうとしたんだけどな」
「奉納できる刀は鍛刀所ごとに一つだ。元弟子がこんな素晴らしい作品を作ったのは誇らしいことだろうに」
「なのに無理だ、とぬかしやがって」

・何が狙いなのか?
「天目一箇神様にこの刀を捧げる」
「それだけのことだ。俺の刀が最強の神剣だと認められる」
「これ以上の誉れはないだろうさ」

・説得を試みる
多々良は興味が無さそうだ。説得は不可能である。

会話が一段落すると、ゆらりと多々良は立ち上がる。
「まあ、何にせよ・・・邪魔するなよ」
「天目一箇神様の降臨は今夜、成されるんだからさ」

多々良が何かを口にすると、炉から炎の吸血鬼が飛び出し刀の刀身へ溶け込んでいく。
炎の吸血鬼による正気度喪失は発生しないが、この一連の正気度喪失は0/1d4である。

多々良との戦闘となる。

戦闘開始時に以下の情報を開示し、整理する。
戦闘終了条件は古硫玻主の刀に5回の日本刀による攻撃を与えること。
多々良は攻撃を古硫玻主の刀を使用して受け流すため、多々良への攻撃は実質的に古硫玻主の刀への攻撃に等しい。
室内には大量に日本刀が置いてあり、自動的に行動を消費せずに装備・準備することができる。
また、炉からは1ターンの終わりごとに炎の吸血鬼が生み出される。
炉の解体にはPC一人の行動番を消費することで自動的に解体される。

戦闘が終了すると、多々良は建物の壁を刀からの炎で吹き飛ばし、逃亡する。
外に出ると、多々良が自動車に乗って走り去っていくのが見える。※4

<多々良の後を追う>自動
多々良は神社へ向かっているようだ。
車間距離を離されつつも、神社の駐車場で停止した多々良の車を発見する。

PCが後を追うと、自動的に次のシーンへ移行する。


15.遠く輝ける北落師門

追いかけると、天目神社の前に多々良の車が駐車場に放置されている。
神社の門が煌々と燃えている。通り抜けられるように切り裂かれている。
門の近くには山瀬と同様に燃えている死体が見つかる。神社の警備員だとわかる。

奥へと進むと、中庭のような場所の中心に台座があり、その傍らには多々良がいる。
多々良は何かを唱えながら古硫玻主の刀を台座に突き立てる。
頭上に輝く星の一つが、まるで燃えるかのように明るく輝いた気がする。

<天文学>に成功
みなみのうお座α星、フォーマルハウトではないかと思いつく。

はるか遠いフォーマルハウトからクトゥグアが招来される。
以下の描写文を読み上げる。

「その距離は22光年、約200兆Kmにも渡る。
そのはずであるのに、あの星が輝いた瞬間に体から汗が溢れるのはその熱を感じたからか。
それとも、その熱の正体に気付いてしまったからだろうか。
時間も、空間も飛び越えて。この約束された時に彼の者は天よりその目を開く。
紅蓮の主が今、この星を炙りながらその姿を現そうとしている」

正気度喪失は1d3/1d20である。

状況描写を行う。
多々良は台座の前で狂ったように笑っている。こちらのことは眼中にないようだ。
その周辺にあるのは古硫玻主の刀とそれを固定している台座だけである。
台座に空いた穴に垂直に突き立てるようにして古硫玻主の刀が固定されている。
古硫玻主の刀は先ほどの戦闘のために刃こぼれが目立ち、傷ついているように見える。

<アイデア>に成功
この台座を中心にして不可思議な力が作用しているように思われる。

<古硫玻主の刀を引き抜こうとする>自動
がっちりと固定されており、思うように抜けない。
<古硫玻主の刀を折ろうとする>自動
折ることができる。適宜演出を行うこと。

古硫玻主の刀を折ると、クトゥグアの招来は阻止される。次のシーンへ移行する。


16.焦がれる狂信

星の輝きが収まり、空から感じていた熱も引いていく。
静かな光景の中で多々良の叫びのみが木霊する。

「ああ、我が天目一箇神よ!なぜ去ってしまうのですか!」
「私も、私も連れて行ってくれ!そうすればきっと、素晴らしい神剣をーーー」

もしPCたちが多々良を取り押さえている場合は、多々良の体から熱を感じ、触れていられなくなる。
正気度が0になった多々良は、炎の吸血鬼へと変貌する。正気度喪失1/1d3。
炎の吸血鬼へ変貌した多々良はそのまま空へと飛び去っていく。


17.結末

天目神社の火事は不審火として処理される。それに伴う殺人もまた、不審者の犯行と片付けられる。
さちがPCと多々良の様子を影から見ていたため、PCたちも少しの事情聴取で解放される。
その最中、古硫玻主の刀はどこかに消えてしまう。※5
この鍛冶の町で起きた炎と刀にまつわる事件がどのような結末を迎えようと、正気度報酬は1d10である。
また、クトゥグアの招来が成功したことによりクトゥルフ神話技能に+5%する。


18.トラブルシューティング

※1  このまま公開することのデメリットはある程度展開が読まれるということだが、逆にハンドアウト的な活用も可能である。
   つまり、ここまでの導入には従ってもらうという了解の上でセッションを進行できるということでもある。

※2 詳しく知りたければ「リアル斬鉄剣」などで調べるとわかりやすい。

※3 他に聞きたいことが無くなってから立ち去らせると良い。

※4 自動車が走行不能になっていた場合、多々良は事前に「門の創造」で作成しておいた門を使用して神社へと向かう。
  これに合わせて「15.遠く輝ける北落師門」の冒頭を変更する。

※5 古硫玻主の刀を破壊、あるいは警察の管理下に置いてしまったほうがいい。
  セッション後にPCの手に渡った場合、継続などに不都合が出る可能性があるからだ。
  この刀の所在を気にするPLがいた場合は、デルタグリーンなどの対神機関の手に渡ったなど、キャンペーンのきっかけとしてもよい。


19.参考
クトゥルフ2010
Delta Green: Countdown

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