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邪念を注ぐ -Malicious Red-

 

<<<<注意>>>>

非常に致死率の高いシナリオであるので、PCを殺すことに躊躇のあるKPはシナリオを見ないことをおすすめする。

生ぬるいキーパリングではこのシナリオを楽しませることはできないだろう。

以上のことを理解した方のみ読んでもらいたい。

 

txt版:https://www.dropbox.com/s/x2ywor5lr9dgeg1/janenn.txt?dl=0

 

1.はじめに

 

このシナリオは、「クトゥルフの呼び声・第六版」に対応したものである。

PCは大学生か、大学を卒業した社会人が望ましい。

PLは3~4人、想定時間はオンラインセッションで6時間程度。

 

2.あらすじ

 

PC達は大学のサークルの飲み会に出席し、夜の大学へ忍びこむことになる。

そこで死体を発見し、事件を調べる内にシャッガイの昆虫の陰謀へと触れていく。

PC達は幾多の血で描かれたこの計画を明らかにし、その邪念を「濯ぐ」ことができるのか?

 

3.NPCs

 

陸奥 義巳(むつ よしみ)♂ 職業:大学生 年齢:21

[プロフィール]

霧明大学で美術を学ぶ学生。

山形のことを尊敬しており、絵画にもその影響が強く出ている。

事件の数日前に、山形の夜人格に邪教の絵を見せてもらう。

事件当日にはゼミという体で山形の屋敷へ呼び出される。

 

山形 広夢(やまがた ひろむ) ♂ 職業:大学教授 年齢:43

STR:12 DEX:8  INT:16 アイデア:80

CON:6  APP:11 POW:12 幸 運:60

SIZ:13 SAN:0  EDU:21 知 識:99

H P:10 M P:12 回避:16 ダメージボーナス:+1d4 

―――――――――――――――――――――――――― 

[技能] 

芸術(絵画):85% 登攀:50% 図書館:75%

こぶし:50% 1d3+1d4

分解光線銃:35% 2d10+2

[装甲]

自画像の効果で実質的に耐久値は無限。ただし自画像を破壊すれば死ぬ。

[呪文]

アザトースの招来

神格との接触/ニャルラトテップ

アザトースの呪詛、手足の萎縮

[プロフィール]

イギリスへの旅行でシャッガイの昆虫に取り憑かれる。

昼は山形としての人格、夜はシャッガイの影響を受けた人格で行動する。

明るい絵柄が印象的な作品が多数評価を受けている。

正気を失ってはいるが、表面的にはその様子を見せない。

<心理学>でも<精神分析>でもいたって普通の状態に見える。

彼はシャッガイの昆虫の傀儡である。

 

シャッガイの昆虫

STR:3 DEX:32 INT:20

CON:3 APP:-  POW:21

SIZ:1 SAN:-  EDU:-

H P:2 M P:21 回避:64 ダメージボーナス:- 

―――――――――――――――――――――――――― 

[技能] ルールブックを参照のこと。

融合:60% 即座に宿主を操る

神経ムチ:50% 特殊

[プロフィール]

イギリスの片田舎から山形に取り憑いてきた。

人間の血を採集し、魔術的な力を貯めてアザトースの招来を企んでいる。

それと平行して山形にアザトースの絵を描かせていた。

その理由は願掛け、あるいは宿主の能力を面白いと感じての遊びか。

それはあくまで我々の価値観の上の理解である。その本質を捉えることはできない。

山形が死んだ場合は、もっともPOWの高いPCへ取り憑いて儀式を完遂させようとする。

 

秋田 橙子(あきた とうこ)♀ 職業:美大生 年齢:22 

STR:8  DEX:16 INT:17 アイデア:85 

CON:9  APP:13 POW:12 幸 運:60

SIZ:8  SAN:60 EDU:16 知 識:80 

H P:9  M P:12 回避:32 ダメージボーナス:-1d4

―――――――――――――――――――――――――― 

[技能] 

芸術(絵画):70% 制作(絵画):70%

図書館:70% 目星:40%

[プロフィール]

山形ゼミのゼミ長。陸奥の死を残念に思っている。

小柄でかわいらしい女性だが、ゼミ生の信頼は厚い。

陸奥のことは後輩ながらも頼りにしていて、気遣っていた。

 

岩手 辰雄(いわて たつお)♂ 職業:大学教授 年齢:48 

STR:14 DEX:12 INT:17 アイデア:85 

CON:12 APP:9  POW:15 幸 運:75

SIZ:12 SAN:64 EDU:22 知 識:99

H P:12 M P:15 回避:24 ダメージボーナス:+1d4 

―――――――――――――――――――――――――― 

[技能] 

歴史:85% 芸術(文章表現):85% 日本語:99%

こぶし:50% 1d3+1d4

[プロフィール]

文学部の教授。元探索者。

山形の様子がおかしいことに気付き、彼なりに探索を開始する。

山形とは教室が隣り合っていることもあり、友人として付き合っていた。

事件の前日から山形ゼミの教室に忍び込んでいる。

彼がイギリスから帰ってきた際に持ち帰ってきた怪しげな本を探している。

 

舞浜 うに (まいはま うに)♀ 

職業:大学生 年齢:21

STR:7  DEX:8  INT:8  アイデア:40 

CON:12 APP:16 POW:17 幸 運:85 

SIZ:11  SAN:82 EDU:12 知 識:60 

H P:12 M P:17 回避:16 ダメージボーナス:0 

―――――――――――――――――――――――――― 

[技能]

聞き耳:75% 芸術(歌唱):83%

精神分析:75% 信用:75%

[プロフィール]

レポートを書くために研究室にこもっている。

ぼけっとしたところのある大学生。

何より眠るのが好きで、安眠妨害されてイライラしている。

 

4.シナリオ注釈

 

山形広夢は、一年前にイギリスへの旅行へ向かい、そこでシャッガイの昆虫に取り憑かれた。

シャッガイの昆虫は遠く離れた極東の地で、アザトースを招来することを計画する。

そのために人間の血を貯め、<アザトースの招来>の成功率を上げようとしている。

ただし、人間の血の中でも魔術的価値のあるものは限られており、採集しても余らせてしまう。

そのため、宿主が不慮の事態で死んでしまったりすることがないよう、自画像を書かせた。

この自画像は山形のダメージを肩代わりする。

ただし、自画像が壊れてしまった場合は山形へ蓄積されたダメージがフィードバックする。

この処置を行ってもまだ血に余りがあったため、山形にアザトースの絵を書かせることにした。

これは人間的な思考であれば願掛けのようなものだが、シャンが何を考えていたのか推し量ることはできない。

必要な血液があと一人分となり、最後の獲物は山形を慕う陸奥にすることにした。

彼に絵の個人指導を行うという名目で家へ呼び出し、絵を描いている隙を狙って殺した。

死体をいつものように大学の廃材置き場へ隠そうとしているところでPCたちが来るのを確認し、逃走した。

 

このシナリオは、PCたちにとっては普通の事件を調べていたつもりが最後に神話的恐怖にぶつかる展開になる。

クトゥルフ神話に造詣の深いPLにとってのヒントも少なめなので、ただのミステリー風味なシナリオだ。

情報の前後もあるが、基本的には一本道のシナリオである。

海外のクライム・サスペンスにありがちな、「最初に捜査線上に上る人間はスケープゴート」というブラフをしく。

すなわち、夜半に大学で活動している岩手をスケープゴートにして、山形をPLの視界から消す。

そして岩手からの情報によって山形を疑い、クライマックスへ突入する。

KPはこのような情報の出し方を心がけると良いだろう。

PCを殺そうと思えばいくらでも殺せる内容なので、少なくともクライマックスを迎えらるようにKPからも支援するといい。

 

5.シナリオ導入

 

久しぶりに大学のサークルの飲み会で会い、飲みながら歓談するPCたち。

酔っ払ったPCたちは先輩からの誘いに乗って夜の大学に忍び込んでみようということになる。

 

残って研究をしている学生もいるのか、大学にはポツポツと明かりが付いている。

薄暗い夜の闇の中、OBは大学生活を懐かしんだりすることだろう。

しばらくして、とあるビルディングに差し掛かった時、地面に何かが転がっているのを見つける。

よく見ると、男性のようだ。倒れており、呼吸をしていない。

<医学>or<応急手当>or脈をはかるなどによって彼が死んでいることがわかる。

死体の皮膚は不自然なほど青白く、血の気がない。

死体に<目星>で首筋に二つの穴があるのがわかる。治療を行っていたなら、そのままこの情報を渡して良い。

死体を漁ると、財布から学生証が出てくる。

この大学の美術学部の学生である、陸奥 義巳(むつ よしみ)であることがわかる。

周りに何か落ちていないか調べた場合、何かの小さいプラスティックの蓋が転がっている。

<アイデア>でこれが絵の具の蓋ではないか、と気づく。

<聞き耳>で誰かが逃げていく足音が聞こえる。

情報を出し終えたらOBの誰かが呼んだパトカーが駆けつける。

 

6.キャンパスライフ

 

PCたちは事件を探る手がかりを求めて、大学へ向かうことになるだろう。

仕事や授業などもあるので、大学に向かうのは5限終わり前、18時頃になる。

美術学部は陸奥の死体が発見されたすぐ側にある。

大教室で座学が行われている。この授業は山形教授の美術史概論である。

帰り支度をしている学生に話を聞くことができる。

・陸奥について

山形のことを尊敬しており、山形も陸奥の指導を進んで行っていた。

作品自体は良くも悪くも山形の影響を受けているとのこと。

・山形について

学生に親身になって教えてくれるいい先生だとのこと。

山形が雑誌の取材を受けた時の記事を見せてくれる。

教室の前方をさして、山形だと教えてくれる。

・最近あったおかしなこと

最近、行方不明者が増えているらしい。行方不明者に繋がりはない様子。

 

山形と話す

・陸奥について

熱心な学生で、最近は新しい作品の制作に精を出していた。

私生活については自分よりゼミ生のほうが詳しい。

事件の当日は昼にゼミがあったので、その時あったのが最後。

・陸奥の作品を見たい

ゼミ生に話を通しておくので、ぜひ見に行ってほしい、と嬉しそうに言う。

 

この時<心理学>を振りたいと申告があった場合、素直に振らせてあげることだ。

その上で山形は何も嘘を付いていないと情報を渡す。

話が終わると、山形は学部の会議があると立ち去ってしまう。

 

ゼミ室がある廊下には、山形ゼミと岩手研究室と表札のかかった教室が廊下を挟んで向かい側にある。

 

・山形ゼミ

秋田 橙子(あきた とうこ)という女子学生がゼミ長のようだ。

彼女は悲しそうな表情をしながら、探索者の話を聞いてくれる。

ゼミ生からの情報は以下の通り。

・陸奥について

熱心な学生で、山形教授の影響を色濃く受けていた。

苦学生で居酒屋のバイトを熱心にしていた。

最近は作品の製作を熱心にしていたようだ。

最後に会ったのは昨日の昼ゼミ。教授の用事のため夕方にはゼミがなかった。

・陸奥の作品

陸奥の作品を見せて欲しいというと、以前コンクールに出したものが出てくる。

山の端から見えてくる朝日を描いたものであり、陽光の表現が印象的だ。

最新の作品について聞くと、自宅で作っていたかも知れない、と話す。

・山形の作品

山形の作品に興味を持った場合は、雑誌を見せてくれる。

陽光の表現が陸奥と似ている。

 

「自分たちは第一発見者であり、部屋を見て何か気づくかもしれない」

という内容を各交渉技能の方向性に合わせてロールプレイすれば補正を加えて良い。

成功すれば彼女は納得し、隅にあった机の中から陸奥の置いていった合鍵を出す。

自分がついていくことを条件として陸奥の部屋へ出入りすることを許可してくれる。

 

そのまま陸奥の家へ向かうにせよ、他の場所から手掛かりを得るにせよ、出る前に秋田はゼミ生にゼミ室の鍵を持っているか聞く。

誰も持っていないと答えると、戸惑った様子。

入った時に鍵が開いており、昨日の昼ゼミで確かに鍵を閉めたと言う。

鍵はひとつしかなく、学部の事務所で管理している。事務所の警備は厳重なため、鍵を盗むことはできない。

実は前日の夜に岩手が山形を調べるために合鍵を使って侵入している。

急いで帰る際に閉め忘れてしまい、夜から鍵が開いたままだった。

KPはここで誰かがゼミに夜間出入りしていたのではないか、と印象づけること。

 

・岩手研究室

山形ゼミの向かい側にある文学部の研究室。

中央には6人がけのテーブルがあり、書類が散乱している。

テーブルの上には文学に関するレポートが置いてある。

部屋の隅にあるソファの上では毛布に包まれた何かがもぞもぞと動いている。

毛布をめくってみると、女子学生、舞浜うにが寝ている。

詳しく話を聞くと、昨日の夜からここで寝ていたらしい。

昨日の夜寝ていたら物音がして起こされたとのこと。

その正体は確かめなかったものの、音は向かいの部屋からしていた。

一昨日も先輩が物音を聞いたと言っていた。

なぜここにいたのかと聞くと、教授にレポートの相談をしたいのだが、なかなか戻ってこないのでここで張っているとのこと。

 

7.陸奥の自宅

 

学生らしいワンルームマンションで、キッチンには片付けられていない皿が置いてある。

床は掃除されており、特に目立つものはない。

机の上にはデスクトップとペンタブが置いてある。

パスワードが必要で、ログインすることができない。

<コンピューター>でハックしても、大した情報は出てこない。

本棚に<図書館>を行うと、様々な美術作品の画集が並んでいる。

印象派やポストモダンなど様々だ。

壁にかけられているコルクボードには、最近の予定が書かれている。

ほとんどがバイトのシフトだが、事件の当日の夜のシフトが消され、新しく「ゼミ」と予定がある。

ベランダにはカンバスが置いてあるのが見える。

赤と黒で描かれた絵で、暗い印象を受ける。

<博物学>や<芸術:絵画>で特に目立つところのない油彩画だと感じる。

 

8.バイト先

 

ごく普通のチェーン居酒屋である。

店長に陸奥について話を聞くと、

何日か前に事件当日の夜のシフトを変えるよう言ってきた。

勤務態度は真面目でよく働いていたし、学校の都合ということで許可した。

という内容の話が聞ける。

 

9.侵入者は誰?

 

ゼミへの侵入者を調べようするPCたちは、夜に大学で待ち伏せることになるだろう。

秋田にゼミの鍵を借りたいと言っても、頑として貸してくれない。

舞浜には交渉が必要だ。彼女は泊まり込みで睡眠を妨害されている。

騒音を解消するという点がポイントである。適宜補正値を与える、もしくは自動成功にする。

夜、大学で待ち伏せていると誰かが山形ゼミの教室へ入っていくのがわかる。

教室へ入って、PCが多人数なのを確認するとその人影は参ったとばかりに手を上げる。

舞浜が同行している場合、すぐにその人物が岩手教授だとわかる。

岩手教授はPCたちに山形の様子がおかしいということを伝える。

一年前にイギリス旅行に行った時から何か変らしい。

その時に怪しげな本を持っていたらしく、その本を探して侵入していた。

部屋を調べても特に何も出てこない。

岩手教授も先日から調べていたが、何も見つからなかったと言う。

本は自宅にあるかもしれない、明日、山形の行動を追ってみると岩手は言う。

PCたちは陸奥が大学にいた理由をゼミ生から探ってほしいと依頼される。

 

※すぐに夜に待ち伏せるという発想にはならないかもしれない。

その場合は次の日に進め、山形ゼミなり、岩手研究室に行った際に、また夜に異変が起きていることを示唆する。

秋田「何か、作品の配置が変わっているような気がするんですよね・・・?」

舞浜「昨日も山形ゼミがうるさくてさあ・・・何かやってるの?」

 

10.捨てられているのは

 

岩手と遭遇した次の日、山形ゼミへ向かうと、ゼミ生たちで教室の片付けをしている。

PCたちにこれを手伝わせる方向へ誘導すると良い。

秋田が大きなオブジェを持っていて、転んで倒してしまうなどの演出が適当だろう。

 

秋田についていくと、廃材置き場まで向かう。

そこにはたくさんの作品だったものが積み重ねられている。

<聞き耳>をロールする。妙な匂いを感じる。

失敗したPCと秋田がオブジェを投げ込むと冷蔵庫を改造した作品の扉が開く。

酷い異臭が周りに立ち込める。中には腐敗した死体がある。

正気度喪失は1/1d4+1。

<アイデア>ロールでここが死体置き場として利用されていたことがわかる。

そして、陸奥が大学にいたのは彼の意志ではなく、彼もここに処理される途中だったのだ、と理解する。

 

岩手から電話がかかってくる。苦しそうな声で呻いている。

山形を追っていたが、気づかれて不意打ちを受けたとのこと。

恐らく山形は自宅に戻って何かをしているのだろう、と告げると、電話の向こうから反応はなくなってしまう。

山形は死んではいないが、気絶してしまったのだ。

山形の自宅の所在は、秋田に聞くことができる。聞くと、思い出したように山形の家でのパーティーの話をする。

パーティーの途中で山形が頭痛を訴えたため自室へ連れて行こうとしたが、一人でいけると2階の部屋に行ってしまった。

何か大事なものでもあるのか?と噂になっていた。

それ以来山形の家には行っていないとのこと。

「11.血塗られた結末」での戦闘処理のヒントになるので、あからさまでも構わないのでこの情報を出す。

秋田は警察へ説明を行うため、PCたちに山形の家の場所を教えてここに残る。

 

11.血塗られた結末

 

KPはこの段階が夜、ないしは夕方になるよう時間を調整すること。

前項での取り調べをPCたちに行ってもいい。

ここから不定の狂気への値を設定し直すこと。クライマックスまで再度の更新は必要ない。

中心地から離れた丘の上にある建物で、古い館を改修したもののようだ。

玄関から進むと、キッチンや応接間へ繋がる広間に出る。

 

キッチンを調べると、包丁一式がある。冷蔵庫の中身は入っている。

何か違和感を感じる。<目星>or<アイデア>を行うと、床の一部が扉になっている。

扉を抜けて進むと、その下は地下室になっている。

地下室は直方体の構造だが、6面のどこにも血が付いている。

扉の正面には椅子があり、ケーブルが2本伸ばされている。

ケーブルの先端には針が2本ついており、バケツに向かって伸びている。

正気度喪失は0/1d3。

 

応接間には絵画の道具一式と、カンバスが一つ。

絵画道具の中には、蓋が空いたままの黒い絵の具のチューブがひとつ。

陸奥の握っていた絵の具の蓋と合いそうだ。

カンバスは陸奥の家にあったものとそっくりだ。

奥へ続く扉が一つある。

その先へ進むと、アトリエのような空間へ出る。

まず、正面には大きな赤黒い絵が壁一面に描かれている。

赤黒い塗料で塗られている絵。

暗雲のような背景だが、中央上部は鮮やかな赤で描かれている。

赤の中心は濃く塗りつぶされている。

その周りには小さな点がいくつか見える。

この不気味な絵を見たことによる正気度喪失は0/1d2。

<アイデア>で記事に書かれていた芸風とは違うように感じる。

鮮やかな色彩が目立っていたが、この絵は真逆に暗く、陰鬱な印象を受ける。

<オカルト>で宗教画に似ていると思う。塗りつぶされている部分がこの作品の主題だと気付く。

<芸術:絵画>であればこれに加え、この絵が単一の塗料で描かれているのがわかる。

塗料の濃淡を工夫することで色を赤と黒に分けている。

<クトゥルフ神話>をもし振りたいものがいれば、成功した場合はこれが宇宙の神殿におわす白痴の神を描いたものだと気付いてしまう。

このことに気付いたPCの正気度喪失は1/1d10。

作業中なのか、塗料の入ったバケツが置いてある。

中には赤く鈍い色の液体、血液が相当量入っている。

左手には2階へ登るための階段と梯子が見える。

全員がここへ集合すると、赤く染まった絵筆を持った山形が現れる。

彼は言葉少なに彫刻刀を取り出すとPCたちへ投げつけ、戦闘になる。(ここでは投擲など振る必要なしの演出程度でいい)

 

ルールブック通りの戦闘処理が望ましい。特に回避や受け流しなどのルールを今一度確認すること。

山形にダメージを与えても、ラウンド末に傷は修復してしまう。正気度喪失1/1d2。

ダメージを自室にある肖像画で肩代わりしているのだ。

組付きで抑えこまれた場合、山形は「アザトースの呪詛(P250)」を使用してくる。

POW喪失の隙に組付きを引き剥がす。

山形は素手のように見えるが、自分の手番では光線銃を取り出して撃ってくる。

山形の標的は近くにいるPCだ。2階へ向かった者がいる場合は、そちらを優先的に狙い、追いかける。

探索者が山形に近接格闘でダメージを与えた場合、分解光線銃のロールにルールブックに従ってゼロ距離射撃のルールを適用すること。

分解光線銃が命中した場合、1d6で頭・左腕・右腕・胴体・左足・右足の対応する位置に命中する。

その部位が分解されたとして適切なペナルティを加える。

また、分解光線銃によるダメージでHPが0以下になった場合、そのPCは液状に分解される。

分解された犠牲者を見たことによる正気度喪失は1/1d8。

 

二階に向かうには梯子を登るか、階段を登る必要がある。

それぞれ<登攀>もしくは<DEX*5>ロールになる。

二階の山形の部屋には、山形の自画像がある。その他は後述する。

肖像画は傷ついており、その上から新たな絵の具、すなわち血液が塗られている。

肖像画を見ていると、真新しい傷が出来ていく。それは先ほど探索者が与えた傷である。正気度喪失0/1。

肖像画を破壊すると、山形の体に異変が起きる。

今までに受けた傷(探索者の与えた傷を含む)が全て体に現れ、その力に耐え切れなくなったかのように肉が弾け飛ぶ。

悲惨な死を目撃したことによる正気度喪失は1/1d6。

山形の体からシャッガイの昆虫が飛び出し、POWが最も高いPCに取り付く。

全員が狙われたPCの額にシャッガイの昆虫が張り付いているのを見つける。

シャッガイの昆虫を目撃したことによる正気度喪失0/1d6を行う。

融合:60%のロールを行う。

融合が成功した場合、「12.邪念は満たされた」に移行する。

失敗した場合、一応の戦闘処理としてDEX順でラウンドを行う。

狙われたPCに<こぶし>を振らせるなどが適当だろう。

シャッガイの昆虫を倒せばシナリオ終了となる。

 

また、全員が発狂してしまった場合、山形はPC達を無視して余裕綽々に外へと向かう。

「13.沸騰する宇宙の核」に移行する。

 

12.邪念は満たされた

 

融合が成功した場合そのPCはシャッガイの昆虫に取り憑かれる。

取り憑かれたPCは、おもむろに外へ飛び出す。

PC同士の位置関係によって場所によって階段を駆け下りたり、部屋の窓から飛び出したりなど描写を変える。

後を追えば、夜空に向かって何かを唱えているPCの姿が見つかる。

PCは操られ、<アザトースの招来>を唱えているのだ。

この時招来を行ったPCに呪文のコスト、1d10SANを支払わせること。

招来に使われるMPは、シャンのPOW21+探索者のPOW半分の値(切り上げ)が適当だろう。

アザトースのPOWは100のため、すなわち(1+POW半値)*5%でアザトースの招来が成功する。

(取り憑かれたPCにロールをさせると良い。)

招来が成功した場合、「13.沸騰する宇宙の核」に移行する。

招来が失敗した場合、「14.消散する狂熱の宴」に移行する。

 

※一応の手段として、この詠唱を止める方法はある。

追いついた後、ある程度の距離を想定している。飛び道具でないと攻撃して止めることはできない。

山形の分解光線銃ならばこれに足りるかもしれない。

不確定な不安によって友人を殺せるのか?それはPC次第だ。

 

13.沸騰する宇宙の核

 

招来が成功した場合、以下の描写文を読み上げること。

 

その中心では、何かが爆発していた。

たくさんの毛のようなものがうねうねと動き、さながら太陽のコロナのように光っている。

その装飾が縁取る中心では、人間の知らない物理法則によって核融合と分裂が繰り返されている。

幻聴が聞こえる。無数のフルートと、ドラムの音を。

あの絵を幻視する。赤く染め上げられた光景の中の、その沸騰する核を。

何かの芸術というべきだろう光景が、現実を伴って夜空に広がっていた。

この圧倒的な光景を見た者は、1d10/1d100。

 

2ラウンドでアザトースが地球から去って行くこととする。

ラウンドごとに偽足による攻撃を行わせる。詳しくはルールブックを参照すること。

アザトースが最初に狙うのは召喚者、すなわちシャンに取り憑かれたPCである。

それを殺した後は他のPCをターゲットにして攻撃してくる。

アザトースが去って行くのを見届けた後、残されるのはアルカリ質に変質した土壌と、生き残った探索者だけだ。

 

14.消散する狂熱の宴

 

招来が失敗した場合、取り憑かれたPCは逃走する。DEX対抗を振らせること。

誰かが2回成功した場合は取り憑かれたPCを取り押さえることができる。

しかし、シャンに取り憑かれてしまったPCからシャンを追放することはできない。

このPCをどうするかは、残された者たちの判断に委ねられる。

失敗した場合は、PCは夜の闇へと消えていく。

 

15.新たな宿主は

 

山形の部屋には自画像以外に大きな本棚と、血で描かれた絵が幾つもある。

本棚に<図書館>を行うと、古めかしい本が見つかる。

この本を手掛かりとして調べるのならP151の調査修正値(RM)を参照すること。図書館のランクは20とする。

調べた結果、この本が「ミサ・ジ・レクイエム・ベル・シュジャイ」であることがわかる。

正気度喪失は1d3/1d6。神話技能に+4。解読には2週間。イタリア語。

内容は陰惨なオペラであり、取り憑かれたPCを助ける手掛かりはない。

取り憑かれたPCは解読にかかった一日ごとに1d3の正気度喪失を行う。

PCたちがなにもしない場合は、「ミサ・ジ・レクイエム・ベル・シュジャイ」はどこかへ消えている。

取り憑かれたPCを物理的に苦しめても、シャッガイの昆虫が出ることはない。

シャッガイの昆虫が宿主から出るのは、宿主が死んだ場合のみだ。

 

16.事件の結末

 

アザトースが招来されたか、未然に終わったか。

被害の多寡はどうであっても、生還したPCは安堵から1d10の正気度を回復する。

ただし、シャッガイの昆虫を取り逃した場合は1d6の正気度を失う。

シャッガイの昆虫は取り憑かれたPCを宿主として、また招来の計画を行うのだろう。

アザトースの招来が成功している場合は、神話技能に+5%する。

 

17.参考サプリメント

「クトゥルフ神話TRPG キーパーコンパニオン」

「クトゥルフ神話TRPG ミスカトニック大学」

「クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム」

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